
松井修三の
思ったこと、感じたこと
大塚家具の親子のような
投稿日:2016年5月8日
今日、ご兄弟夫妻から2棟のご注文をいただいた。
母が遺した土地に、それぞれの思いのこもった家が建つ。
マツミさんを選んだのは、私がみんなを説得したからです。
お兄さんの奥さんが笑顔で言われた。
「だから『いい家』を建てる。」を読みましてね、こんな親子が経営している工務店にお願いしたいと思ったのです。
お客様のために尽くそうとする数々の努力話に感動させられました。
特に印象的だったのは、豪雨から家を守るところでした。
こういう親子なら、大塚家具の親子のようなことにはならないと、仕事柄(公証人)心配する主人を説得しました。
私は、第3章「転機」にあるそのシーンを読み返してみた。
もし、あのとき、誰かが足場から転落していたら、いまのマツミハウジングはなかったと思うと背筋に冷たいものが走った。
でも、あの日のあの瞬間は無我夢中だったのだ。
■ 現場守り
1997年8月、夏休みの初日のことだった。昼過ぎに空模様が一変し、突風が吹き始めてまもなく大粒の雨が降り出した。
電話が鳴った。
父の声で、「ビラ・トリアノンが豪雨に襲われている。シートを持ってすぐ来い!」と言う。 事務所に立ち寄ると、明日田舎へ帰るという現場監督がいた。
二人で現場へ駆けつけたときは、車のワイパーを最強にしても前方が見えないほどの激しい雨だった。
「ビラ・トリアノン」と名づけられたその建物は、西東京地域では最初の木造3階建てのアパートであり、しかも外断熱工法という点でたいへん注目を集めていた。
「濡らしたくない」
そう思う父の気持ちが、よくわかった。
私はすぐさまシートを抱えて3階へ上がった。
屋根から滝のような雨が通路部分に激しく音を立てて落下していた。それを防がないと、室内に水が回り、防音に工夫をこらした床や壁を濡らしてしまう。
とっさに状況を飲み込んだ私は、屋根の破風にシートを固定し、通路部分を覆ってしまうことにした。私が脚立に上がりシートを固定しようとするが、強風に煽られ思うようにできない。監督も脚立を立て懸命にシートを抑える。下では、父がそのシートを通路の手すりの外側に固定しようと苦戦している。
大屋根から滑り落ちてくる雨は、正に滝のような勢いで顔面を打ち続ける。
身体が後ろに押される。圧力に負けたら転落してしまうという恐怖と戦いながら、シートを屋根に固定した。
ところが、強風と豪雨の圧力でシートを手すりの外側にかぶせることができない。三人は外側にある足場に出て、シートを引っ張ることにした。風が凪いだ一瞬に、シートが通路を覆った。次の瞬間、大屋根から溜池の水をひっくり返したような勢いで、雨水が三人を襲ってきた。
真ん中にいた監督の身体が悲鳴とともに大きくのけぞり、足場に貼られたシートに張り付けになった。私と父が両方から引き寄せて、三人は足場にしがみついた。
努力の甲斐があって室内を濡らさずに済んだのだが、養生不足を猛省させられた。中途半端な養生は、いざというときに役立たないどころか禍をもたらしかねない。

- 松井 修三プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
「いい家」をつくる会代表 - 著書新「いい家」が欲しい。
(創英社/三省堂書店)
「涼温な家」
(創英社/三省堂書店)
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