第1回 年頭の所感
日本酒は本来純米酒でした。
米を醗酵させて搾ったお酒が純米酒であり、かってはそれが日本酒そのものであったわけです。ところが、第二次世界大戦による食糧不足の時代、少量の米から大量の酒を造るために、アルコールや調味料を加えて二倍にも三倍にも増量する製法が生まれました。まさに時代の要請に応じた緊急避難的製法が考案されたのです。
このような増量製法はとっくの昔にその歴史的使命を終わっているはずなのに、未だに幅をきかせ日本酒の90%以上を占めているのは何故でしょうか。
原価が安い、均質の酒を大量生産するのに適している等々、メーカーにとって大変好都合だということもありますが、何よりも純米酒のすばらしさを消費者の皆様にお伝えできていないことが最大の原因であろうと反省し、この小冊子を作成しました。
一切の添加物がない純米酒は、原料の水と米、そして造り手の技と心が反映された個性豊かな風土の酒であるとも言えます。
(蔵元交流会が発行している「純米酒のすすめ」より)
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この一文を読んでいると、手づくりの家も純米酒のようなものだと思いました。そして、私が家づくりに感じていることが、酒造りにもそっくり当てはまっていたのかと驚かされました。
そしてまた、いいものを一人でも多くの人に知らせたいという思いに共感を覚えました。
私の父は、大変な酒好きでしたが、私は、さかずき一杯も飲めない母親の体質を受け継いだせいか、あまり飲みません。
でも正月には、現場監督の中に秋田の小玉酒造の息子がいて、彼からもらった太平山の純米大吟醸「天巧」を、音楽を聞きながら飲んでいます。
純米酒は、ぬる燗が基本で、ちょうど良い温度に燗をすると劇的においしくなるそうです。昔、父はかたわらに置いた火鉢の上にやかんをのせて、お湯の音を聞きながらゆっくりと温めて飲んでいました。そんな姿が懐かしく思い出されて、目頭が熱くなります。
父は私が創業するときに、「約軽しといえども、これ重んずべし」と書いた軸をくれました。それは今も事務所に掲げて、座右の銘としています。
「契約書以上に、“いい家を造ります”とお客様に対して心で交わす約束は、たとえどんな小さなことであっても大切にせよ」と父は教えてくれたのです。
あれから30年が過ぎたのですが、初心に立ち返って「いい家」づくりに励む決意を新たにしています。
昨日は、94才になる母を見舞いに行ってきました。帰り際に握手したその手のひらから、なんとも言えないやさしさと温かみが伝わってきたのです。
「私の手のひらのように、やさしさと温かみにあふれた家を、手をかけ、手を尽くして造って下さいね」という母の願いに胸を打たれた思いです。
私は1月5日で64才になります。しかし、94才の母の手のひらが発するようなやさしさも温かみも、家づくりに発揮できないでいます。まだまだ、未熟者なのです。
60代は、より「いい家」づくりへの挑戦のために、70代は、人様のお役に立つことと、より感動を広め、深めるために、そしてもし神様がお与え下さるなら、80代は人を愛するために生きたいと思っています。
エッ?90代はですって。
母のように、やさしさと温かみを人に与えられる人間として生かせていただきたいと思っています。
1月6日(月)から営業を開始しますが、今年も、お引き立てを賜りますよう社員、大工、職方一同と共に心からお願い申し上げます。
2003年正月に
松井 修三
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