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第10回 60才過ぎたら

 

 読売新聞の「人生相談」に、こんな投稿が載ったことをご存知でしょうか?

80代の主婦。夫は90才です。娘夫婦が高齢の私たちを心配し、数年前から同居しています。幸い、二人とも健康です。ただ最近、夫も私も夜数回、トイレに起きるようになりました。部屋の隣にトイレはありますが、冬は寒いので、ポータブルトイレを買いました。ところが50代の娘は「二人とも丈夫で元気だから」と、始末してしまいました。ショックでしたが、仕方がなくあきらめました。娘夫婦との同居で、迷惑をかけてはいけないと、毎日気を使っています。でも我慢や忍耐ばかりの生活に少々疲れました。長寿もいいことばかりではないと思ってしまいます。私は60才、夫は70才まで働き続け、健康第一に生きてきました。残り少ない老後で、どうすれば同居生活を上手くできるでしょうか。(東京S子)2003.2.7読売新聞

 考えさせられる相談だ。
まず、部屋の隣にトイレがあっても、寒いので行きたくなくなっているということがお気の毒だ。高気密・高断熱に造られていない家には、たいがい同じ悩みがあるものだ。
次に、「長寿もいいことばかりではない」と嘆きたくなる二世帯同居という暮らし方だ。

 回答者の落合恵子さんは、言われている。
  「少しの距離でも、夜中のトイレは億劫なようですね。夜はポータブルでも、その分、昼間の散歩の距離を延ばすとか兼ね合いを考えながら、できる限り快適な生活をする工夫をしてください。 (中略)
同居とは、一方の考えにもう一方が無理に合わせることではなく、双方の考えを尊重し合うことから始まります。自分たちのことは自分で考え、できるだけ自分たちで動く・・・。健康を維持するためにも大切なことです。必要以上に気兼ねしないことも。ご自分たちでできることと、できないことをはっきりさせ、娘さんご夫婦と相談されたらいかがでしょう。」

 私は、「同居とは、我慢の形態である」と思っている。「打算の形態である」との見方もある。
住文化研究協議会は、つい最近「家族と住文化に関するアンケート」の結果を発表した。
それによれば、「65才を超えたとき、誰と暮らしていたいか?」という問いの答えは、約70%が配偶者との暮らしを望んでいて、「子供世帯と同居したい」は、わずか9%弱でしかなかった。
であるならば、我慢することはない。60過ぎたら、夫婦で思いっきり輝くことだ。これからは、高齢者が若者たちよりも輝き、高齢者になったからできることを遠慮せず楽しむべきだと思う。
そのためには、真っ先に住み心地の良い家を手に入れることである。
 住み心地の良さは、間違いなく住む人を活性化する。元気にする。寝たきりになってしまう原因の多くは、住み心地の悪い家にある。
だから年取ったら子供に気兼ねせずに、思い切って夫婦二人で「いい家」に住むことだ。真冬の夜中にも、パジャマのままでトイレにゆったりといられるような家に。
体調が悪い時にトイレへ行くのが、少しも億劫に感じないのが「いい家」なのだと思う。
建て替えしなくても、「断熱改修」という方法もある。私の家、そして久保田紀子さんの両親の家もそれを行った。住み心地の改善は、驚くばかりである。

2004年2月22日
松井 修三


 

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