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第17回 新年会

 1月15日にマツミハウジングの新年会が開かれた。
松井さんがこんな挨拶をした。

 *-*-*-*-*

新年あけましておめでとうございます。
昨年も雪、今年も雪に見舞われましたね。
これは神様が、「油断しないで心を引き締めるように」と言ってくださっているのだと思います。
さて皆さん、1月11日に放送されたNHKのプロジェクトXを見ましたか?
神戸と大阪を結ぶ大動脈・JR東海道本線の高架橋が落ちてズタズタになってしまったのです。しかし、わずか2か月半後の4月1日、驚異的な早さで全線を開通させた感動の物語でした。
その復旧工事のすごさは驚きの連続でしたが、私が番組の中で感動したことが二つありました。
一つは、5時47分に大地震が起きてズタズタになってしまった線路を、その1時間後には大阪に向かって歩くたくさんの人の姿が映っていたことです。会社に向かっていたのです。自分の住まいは、何がしかのダメージを受けていたことでしょう。家族のことも心配だったはずです。それにも拘らず、会社へ向かうのですね。その姿に責任感がにじみ出て見えました。
地震 私はその時想像しました。東京で大地震が起きたら、マツミハウジングに向かって歩いてでも出社する社員が何人いるのだろうか、と。
もう一つは、復旧工事に携わった奥村組の社員の話です。自宅が壊滅的な打撃を受けていたにもかかわらず母親が息子に言いました。
「家は私にまかせなさい。あなたは仕事に行きなさい。こんな時こそ世間のお役にたちなさい」と。

大地震は間違いなくやってきます。いつ来るか?
私は3年以内に来ると皆さんとイメージづくりをしておきたいと考えています。マツミハウジングは、「住み心地」がいいということをお客様との約束事にしています。それには非常時にも、家が何よりも信頼できる安全を確保していなければなりません。
「安全なくして安心なし。安心なくして、住み心地もなし」だからです。
ですから、常日頃、大地震をイメージして、大地震が起きたときに、どうやってマツミの家を守るかを考えていただきたいのです。
いざというときに、マツミの家を守るために効率よく皆さんの力を結集して欲しいのです。
そして、工事中は現場において釘1本、ビス1本打つにも、それが大地震のときに家を支えるんだ、守るのだ、という思いを込めてやっていただきたい。
その思いは、自分の安全の確保に繋がります。皆さん自身の安全の確保は会社の安心、家族の安心となり、それがお客様にとっても安心となるのです。

ところで、昨年はシロアリ対策と取り組みました。既築の家に関してのシロアリ対策は、監督さん、大工さん、職方の皆さんの協力を得て大変順調にはかどり、一応の目処が立ちました。
ところが、新潟中越地震で私を震え上がらせる知らせがあったのです。
それは、蓄熱暖房機の転倒です。そこで、いち早くクレダの震動実験を行いました。梶野部長が工夫して実に素晴らしい実験装置を用意してくれたおかげで、3次元の振動を実現したりして徹底的にテストを繰り返しました。
その結果、クレダの取り付け方の問題点と、クレダ自体の問題点を究明できました。
ライバル側は、「松井が勧める暖房機は転倒したら、700度近くにもなったレンガが飛び出して危険だ」と言っていると聞きました。
しかし、レンガは飛び出さないことが判明しました。また、転倒しても火事にはならないということも再確認しました。
そこで今年は、クレダの取り付け補強工事をできるだけ速やかに行いたいのです。大工さん、職人さん、みんなにぜひとも手を貸してもらいたい。今度の冬までには必ず終わらなくてはなりません。

お陰さまで、受注は順調に推移しています。私と久保田さんの本を読まれたお客様が、熱い思いでやってこられます。
そのお客様方に対して、絶対に守りたい約束があります。それは皆様がよく承知されている通りで、マツミハウジングの信条に則った仕事をするということです。
それは「住まいとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願えるものでなければ、住まい造りに携わってはならない」ということです。住む人が不快になったり、不安になったり、不満を感じたりすることはしてはなりません。いかなる場合であっても、この信条を大切にしていくのです。
私は1月5日で66才になりました。このあたりで、社長交代をしなければと考えています。専務である松井祐三に引き継ぐ予定ですが、誰が社長になるにしても、マツミの信条に則った仕事をするならば、お客様が支持してくださると確信しています。
設計も監督も、大工さん、職人さんたちもみんなすばらしい人たちに恵まれています。そして、ありがたいことに私はすこぶる健康ですから、このような時期に社長を交代することがよろしいのではないかと考えます。
私は、これからもマツミの信条に則ったことがきちんと行われているかを見守ることを第一の仕事にし、次に私でなければできないこと、そしてそれをすることでマツミの家づくりがさらに向上し続けていくことに取り組んでいきたいと考えています。
「いい家」をさらによくしていくために、勉強したいこと、見たいことがたくさんあるのです。私にぜひそれをやらせてください。そして、次期社長を全力で支持してください。(このとき、会場にいた170人ほどの人たちから心のこもった大きな拍手が起こった)

さあ、みなさん、お客様のご期待を絶対に裏切らない、いざという時にはマツミの家を守るという約束を確認し合って、新年もケガや事故のないように、健康に注意して、いい仕事と精一杯取り組んでいきましょう。

 *-*-*-*-*
 
私も挨拶を求められたので、こんなことを話した。

年が明けてから、早々に私が感動したことを二つお話します。
1月6日の社員さんだけの新年会の席で社長が、みんなに向かってあなたの一番欲しいものを順番に言ってくださいと言われました。皆それぞれに話していき、経理をしている奥さんのなつ子さんの番がきました。
するとなつ子さんはいつもの明るい感じで、いきなり「私はお金が欲しいです」と言われました。私はなぜお金なのかと思いました。
すると、なつ子さんは「皆さんにたくさん差し上げたいからです」と言われました。私はその言葉の響きの中に、胸にこみ上げるものを感じたのでした。
着席されたなつ子さんは、目頭を押さえていました。楽しくお酒を飲みながらも、創業して33年間の様々な思いが胸中を駆け巡っているのだろうと思いました。
これまでに、さぞかしいろいろなご苦労があったことでしょう。その中でも、一生懸命に働いてくださる社員さんたちに十分報いることができないという思いが一番つらいというのです。
次に社長の番だったのですが、話は空中分解してしまいました。なつ子さんと同じ思いになったからだと思いました。
しかし、お二人の思いはその場に居合わせた社員さんたちの心に十分伝わったようでした。

犬 もうひとつは、つい最近の出来事です。車の往来の激しい道路で、犬が右に左に走り回っていたのです。行きかう車は、はねないように急ブレーキをかけたり、ハンドルを切ったりしているのですが、その犬が車にはねられるのは時間の問題に見えました。
そのときたまたま反対側の歩道を高校生らしい女生徒が二人歩いてきました。
窓を開けてその学生に「犬を捕まえてあげて!」と私は叫びましたが、興奮して駆け回る犬を抑えることはとても無理に見えました。
すると社長は「車を止めなさい」と命じると、トランクにたまたまあった紐を手にして道路を渡っていき、見事に犬を取り押さえたのです。
しかし犬はさらに興奮したようで社長に飛びつきます。さんざんてこずりながら首輪に紐をかけることに成功しました。そして、女子学生に交番に連れて行ってくれるように頼みました。
たくさんの車が走っていたのですが、犬を捕まえる人は社長の他にだれもいませんでした。
社長は日頃から「一歩前に出る人になれ」と言われています。お客様のご期待に応えるためには、一歩前に出る積極性、気配り、思いやりといったことが大事だと、その言葉を自ら犬のためにも実践する姿を見て私は感動しました。
この二つの感動で、私は、今年もマツミハウジングというすばらしい会社で、「いい家」造りに携われることをとても幸せだと思っています。
今年も「いい家」を皆さんと一緒にたくさん建てたい、それが私の願いです。

2005年1月18日
久保田 紀子


 

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