外断熱・ハイブリッド・エコ住宅/空気がきれい! SA-SHEの家/マツミハウジング

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第21回 定休日


定休日である水曜日、松井さんはほとんど毎週現場視察に出かける。
私は運転手を買って出てそのお供をすることを楽しみにしている。
先週はこんなことがあった。
「ストップ!」
急に声がかかる。見たい家を見つけると、松井さんはいつもながら突然命令する。最初は大いに戸惑い、あせったが最近ではいかなる場合にも前後左右の安全を確認しつつ、できるだけ早く停車する訓練が身についた。
工事中の二階建て住宅。外周には気密シートが張られ、綿の断熱材が透けて見えていた。
「ほら、筋交いのところを見てごらん。うまく入っていないでしょう。全体的には珍しいほどにきちんと施工しているだけに残念だね」
松井さんは、現場に入って行く。
「大工さん、ちょっと見せてもらっていいですか?」
40代と見える大工さんが一人、玄関脇の和室でしゃがみこんで仕事をしていた。
「断熱工事を丁寧にしているね。いつもこんなに丁寧にやっているの?」
「ええ、詰め終わったら写真を会社に提出することになっているので」
「現場監督さんが写真を撮るのでしょう?」
「いや、監督はいないから・・・」
「エッ!監督さんは来ないの?」
「いや、いないんですよ」
「ということは、段取りを大工さんがやっているの?」
「大工がいる間はそうです。出てしまったら後は職人同士で連絡し合ってやっていきます」
「それでうまくいけばいいのだろうが、クレームが起きたらだれが対応するの?」
「大工に係わるところは自分で、その他はそれぞれの職人がやっています」
「それで治まらない場合には?」
「会社の人がやってるみたいです」
「ところで、大工さんはどのくらいもらっているの?」
「坪、4万円ちょっとぐらいかな」
「そうですか。となると数をこなさないと大変だね」
「まあ、そういうことです」
「会社は年間何棟ぐらい建てているの?」
「300棟ぐらいかなー」
「それであなたは?」
「今年は5棟ぐらいだね。なにせ一人だから」
私は、その間現場の内外を観察していた。玄関脇にコーヒーのカンが3本と雑誌が転がっていたのが気になったが、まあまあ整理整頓されていた。

そんな調子で、マツミの家を見て歩きながら他社の現場も寄ったりして、その日は8現場を見回った。
午後から立ち寄った現場では車が路上駐車できないので、私は車の中で待っていた。すると松井さんが手招いた。新人の大工さんを紹介してくれるという。
棟梁の真柄さんの脇にその新人さんが立っていた。
「オーッ、かっこいい!」
私は内心叫んでいた。年のころ20代前半、筋肉質で背も高い。目が輝いていて、表情がとても魅力的。驚いたことは挨拶の言葉の響きの美しさだった。
親方が紹介した。
「Sと言います。演劇を目指していたのだそうですが、先行き飯が食える見通しが立たない。稽古場に通う途中で働いている大工の姿を見ていて、現場もステージだ、そこで精一杯お客様に喜んでもらえる演技を身に着けてみたい、って思ったそうです」
「そうか。よくぞマツミのステージに立とうと決意してくれたね。うれしいよ」
笑顔でそう言ってから、松井さんは続けた。
「だけどな、マツミのお客様の願い、つまり“いい家が欲しい!”という願いは、ものすごく真剣だよ。半端な覚悟では受け止められないぞ。修行を続けることだ。修行っていうものは、続けることなんだ。私も今も修行中さ。あなたと同じだ。
がんばろうな!」
そう言って、握手を求めた。
私も手を差し伸べたかったが、遠慮した。
劇団四季の大のファンとしては、演劇志望であったというだけでも胸が熱くなった。
帰りの車の中では、久しぶりに松井さんの顔が明るく輝いていた。
たぶん、私の顔はそれ以上に。

2005年9月19日
久保田紀子


 

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