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第30回 履き心地と安全


中・高生の歩く姿が、男女共にだらしなく見える。
それは履いている靴に原因があると思う。
かかとが低く、いかにも履き心地の悪そうな靴に。
成長を見越して大きめなものを履いているせいか、ガバカバ、ズタズタ、ズルズルといった感じが目立つ。
そのような靴を履いているから、歩き方が颯爽とするわけがない。
久保田さんには中学生の息子と高校生の娘がいるので意見を聞いてみた。
「あの靴は、ローファーといって学校が指定しているのです」
「なんですか、そのローファーとは?」
「靴の形のことで、英語で怠け者という意味だそうです」
 「えっ、それではルーズソックスと組み合わせると“だらしがない怠け者”ということですね。
学校がそうなることを求めているのですか?」
久保田さんは大笑いをした後で、
「ローファーはかかとがしっかり作られていないし、浅底ですからかかとを踏み潰しやすいのです。そして歩くときに足とフィットしないので、引きずるようにして歩く子が多いですよ。
歩く姿勢が悪くなりますから、疲れ易く、健康を害します」
娘さんは、1時間半ほどかけて都内の学校に通っている。久保田さんは顔を曇らせて、
「何か災難が起きて逃げるような場合に、あの靴は足についてきませんから簡単に脱げてしまって、それがために災いとなることがとても心配です」
私は、パニックに襲われたときに片足の靴が脱げて、それに気をとられたために逃げ遅れ、災難に巻き込まれてしまうたくさんの生徒の姿を想像した。
「なるほど、健康に良くない上に、災害のときに逃げにくいとは問題ですね」
「アメリカやドイツでは、学生がローファーを履いていることはないと思いますよ。子供の姿勢を悪くし、安全にも問題があるのですから、もっと履き心地の良い靴に代えるべきです」
久保田さんは、日ごろから子供たちの靴について心配でならなかったと言う。
履き心地の良い靴を選べば、健康と安全にも役立つという考えは、子供を持つ親にしっかりと認識してもらうべきだ。
お互いの意見が一致したところで久保田さんは言った。
「松井さんは本に、履き心地の大事さについてとてもいいことを書いていますね。私の考え方は、そこから学んだものなのですよ。
せっかく住み心地の良い家に住んでいるのに、子供が靴のせいで健康を損なったり、危険にさらされるのは本当に残念なことです」
久保田さんは本を取り出した。
「56ページ、“わがままを聞きたい”。私はこの章が好きで何回も読み直しています。
“いい靴を履くと、姿勢がよくなり気分が高揚します。歩くことが楽しくなり、生きることが楽しくなるのです。それは、足に我慢とあきらめを無理強いしてきたことをやめて、わがままを精いっぱい聞いてやった結果です。そしてそれは、手入れさえすれば一生ものにもなるでしょう。”」

住み心地の良い家に住む人には、靴の履き心地だけではなく、家の中でのスリッパの履き心地、下着の着心地、椅子の座り心地、ベッドの寝心地、布団の掛け心地などに大いに関心をもつことをお勧めしたい。
それらが改善されると、住み心地もまた一段と良く感じられるようになり、健康の増進、安全にも役立つようになるのだから。

2006年2月24日
松井 修三


 

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