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第35回
「無暖房・無冷房の家」とは
アメリカ科学アカデミーの発表によれば、最近25年間の地球の気温は、過去1000年間で最高水準にあるという。
原因は、温室効果ガスにあるようだ。日本でも2004年の夏は、最低気温が25度以上の日が東京で42日、大阪で50日、鹿児島では67日あったという。今年も「夏は暑い」が、「暑い夏」と表現されるのだろうか?
ところで、究極の省エネといわれる「無暖房住宅」が談話室で取り上げられ、関心を呼んでいる。マツミの家でも冷暖房なしと覚悟を決めれば、そんなに無理をしなくても十分住める。その場合、人にもよるが寒さと暑さとでは、どちらが我慢し易いかというと寒さだと思う。
冬には生活の排熱、太陽熱の取得だけでも最低温度を13〜15度前後には維持できるから、寒く感じる分だけ衣類でまかなえば済む。
しかし夏には、それらすべてが暑さを増幅し、不快に作用するから厄介だ。風に頼ろうとしても、ヒートアイランド現象の影響を受けない立地でない限りは、涼しさは得にくい。むしろ日中は窓を閉めた方が過し易い。閉めるとなると、最近のエアコンの省エネ能力と快適演出度の高さを知っている人には我慢はつらい。ましてや、乗る、働く、食べる、買う、くつろぐ、楽しむといった場のほとんどが冷房されているのだから、わが家が「無冷房」ではうんざりするはずだ。
そんなことを考えながら本屋の住宅本コーナーに立った。すると自称断熱屋こと山本順三著「無暖房・無冷房の家に住む」(三一書房)が目に飛び込んできた。
「無冷房」とは気になる。著者は、セルローズファイバ(古新聞を粉にした断熱材)のセールスマンだ。
「高気密論は珍論」、「現在の高気密論は全部間違い」、「外張り断熱は欠陥住宅」、「大学の先生方の指導に従えば外張り断熱に行きつく、お陰で批判も浴びずに化学屋は大儲けしている。工務店はそれが殺人工法であるとは夢考えたこともない。」などと以前からワンパターンの主張を繰り返している。
その本は、自説を実証すべく建てた実験棟での体験記でもあるようだ。
早速手にして、気になる辺りをぱらぱらとめくってみた。
「冷暖房なし!━━とても重みのあるもので、アドバルーンを高く、早く、上げすぎたかも・・・」
「まだ、夏の過ごし方の最良パターンが掴めない。エアコンはないが暑くて汗が止まらない。それだけではない、窓を開け放すと外の温度とリンクするので、室内温度を30℃に留めるにはどの方法が良いのか、いろんなパターンで研究中である。」
なんとも自信のないことが書いてある。無理なことをしなさんな、と言ってあげたくなった。
省エネは大いに心掛けるべきことだが、「無暖房・無冷房」では暮し方が異常だ。非常時以外にはやるべきことではない。
家は快適な住み心地を味わう場であって、寒さ・暑さの実験場でもなければ、修練の場でもないのだ。だからそのようなアドバルーンを上げるよりも、謙虚に住み心地を目的とする家造りを目指すべきである。
山本氏は書いている。
「よく快適と言うが、なにをもって快適なのか定義がない。そこで私なりに快適とはなにかを、午睡に求めた」。それで「午睡が快適にできれば、快適!と定めた」。そして、畳の上で裸で寝ると。
私とでは感受性にだいぶ違いがある人のようだ。
ところで、「暑い夏」には適当にエアコンを使うことをお勧めする。高性能な家では、電気代を月に1万円も使えば暑がりの人でも満足するだろう。
久保田紀子さんは、65坪の広さの家を月4〜5千円前後の電気代で24時間快適涼房空間に維持してきていると言う。(ちなみに年間の冷暖房費は10万円前後)
そのコツは、一日の最低外気温が30度を超える日は、小屋裏のエアコンを昼も夜もつけっ放しにすることだそうだ。
その土地、その家族によって快適度は様々に変わる。それを窓やダンパーの開け閉め、夏用換気扇、エアコンの働かせ方、扇風機との組み合わせ、照明の用い方、そして日除けやカーテンなどの工夫で探り当てるのだ。それは「いい家」に住む人の楽しめる努力だと思う。
2006年6月24日
松井 修三
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