第44回
ドイツの最先端省エネ事情
8月にドイツのデュセルドルフを訪れ、最先端の省エネハウスをいくつか見学した。
デュッセルドルフは、ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州の州都。ドイツで人口密度の一番高い州。工業と商業の中心でもあり、日本人ビジネスマンが一番多く活躍している。
当日は、地元のラジオ局と州の広報の取材を受けた。

毎年、年間暖房費の決算書が届くと、多くの人たちは大きなため息をついて落胆し、賃借人、賃貸人、持ち家に住む人誰もが、毎年上がる一方の暖房費を削減するアイデアを求める。
そんな消費者に対しNRW州のエネルギー局は、ウェブ、また小冊子の配布による、暖房、給湯、換気、電力消費の最新情報案内や省エネに関するセミナーなど、消費者向けの様々なサービスを提供している。

エネルギー局は、NRW州の各都市を[エネルギーアドバイスワゴン]で訪れ、消費者と直接話し合い、より的確なアドバイスをするというサービスを提供している。

エネルギー局は、能率的エネルギーと再生可能エネルギーを促進させるためにNRW州、及び連邦政府が提供している奨励金についての最新情報や実例を消費者に案内している。

エネルギー局に属する専門職人が、建物のエネルギーチェックを行っている。
その内容は、エネルギー局のチェックリストに基づき、住居内の暖房効果を測定するもので、結果により現地にて対策法をアドバイスする。
このサービスは有料だが、Euro77.00の内、NRW州がEuro52.00を負担してくれるため、所有者が払う金額はたったのEuro25.00になる。

【 消費者の声 】
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私にとって、省エネハウスは普通の住居と何の変わりもありません。
唯一、一般の住居と違うのは、居間のハイツング(暖房装置)がインテリアの一つになったことでしょうか。
ここでは暖房装置を使うことが一切ないので、今では物を置く棚代わりに使っています。
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省エネハウスに住むようになってから、冬が好きになりました。暖房を入れる時間はほんのわずかなのにもかかわらず、室内の温度はいつも快適なんです。
以前は、とても古い建物に住んでいて、窓やドアの隙間から外気が入る為、暖房を入れても部屋が完全に暖まることはありませんでした。床に座ると、隙間風が入ってくるのが分かるんでよ!ずっとそんな住居に住んでいたものですから、私も主人も関節痛や坐骨神経痛に悩まされるようになり、とても辛い思いをしました。
省エネハウスに住むようになってから、隙間風が入らず、どの部屋でも、常時一定の室温が保たれるということがどんなに素晴らしいものなのかを実感することが出来ました。
今では体の痛みもすっかりなくなりました。
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私の趣味は料理をすることです。よって、我が家の心臓はキッチンにあるといえます。
家族で集まる場所といえばキッチンなのです。
省エネハウスのキッチンが素晴らしいのは、どんな料理を作っても、特殊な換気システムのお陰で部屋の中に臭いがこもることがないことです。前の住居では、考えられないことでした。
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窓を開けなくても新鮮な空気が部屋に入るというのは何とも快適なことです。
省エネハウスに住むようになってからは、窓やテラスのドアを開けるときは、ベランダに出たいときだけなんですよ。換気は自動的にされるので、何もする必要はありません。
この住居に住むようになってからは、暖房を入れる必要がほとんどなくなったので、現在この50m2の住居で払っている暖房費は月々わずかEuro 5.00です。
省エネハウスに住みたいと思った一番の理由は、暖房費を削減することでしたから、夢がかなったというわけです。
夏の間は、陽が差し込むと室温が上がるので、照射を遮るブラインドをつけて欲しいところですが、他の点では100%満足しています。 |

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賃貸住居の省エネ化
(2007年8月26日のRheinische Post新聞より) |
8月24日、メルケル首相は地球温暖化対策として、エネルギー・環境プログラムを発表した。
これは、今まで企業を中心とした対策法が重視されていた中、今後は一般住居も対象となるプログラムである。その中でもっとも興味深い点は、住居のエネルギー効率が悪くても、断熱工事などで省エネ対策ができない場合、賃貸人が賃借人の暖房費の一部を負担しなければならない制度だ。
ドイツでは既に、既存の省エネ法で、建築の際、断熱材を用いた壁や、効率の良い暖房ボイラーなどの導入を促進している。
この省エネ法は、2008年に更に改正され、築40年の住居建築物はエネルギーパスが義務付けられるなど、2020年までには、最大40%の温室効果ガス削減を目標にしている。
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太陽熱エネルギー
(2007年9月8日のWestdeutsche Zeitungより) |
Kaarst市の緑の党は、Albert-Einstein高等学校の暖房設備の改装と体育館の再建、また今後の新築住宅建築に関し、再生可能のエネルギー源を導入することを提案した。
[それには、太陽エネルギー集熱機が最適だ]と、緑の党は述べる。
同市の建築と環境委員会は、先日行われた協議の際、CDU(キリスト教民主同盟)も、この地方自治体による地球温暖化対策に協力することに同意していることを明らかにした。
今後Kaarst市にて、再生可能なエネルギー源の導入が促進されるよう、この緑の党の提案は、市民に全員一致で受け入れられた。
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エネルギーパス
(2007年9月9日のMeerbusch新聞より) |
1965年以前に建てられた住宅用建築物は、2008年7月1日より、エネルギーパスが義務付けられるようになる。
(1965年以降に建てられたものは、半年後の2009年1月1日以降)エネルギーパスとは、住居のエネルギー効率の状況を示すことにより、年間暖房費や給湯費を明らかにするもので、所有者は今後、売却や賃貸の際に、買主や賃借人にこのパスを提示することが義務付けられる。
ドイツでは、地熱利用はほとんど普及していないというのが現状であり、連邦政府はこれを将来性のあるテクノロジーとして支援を行っている。
そんなドイツの中、地熱利用で先頭を走っているのはNRW州。
現在NRW州では、地熱利用に関する複数のプロジェクトが進行中で、Werne市のFuerstenhof地区では、130本近くのゾンデをボーリングしたヨーロッパ最大規模の地熱利用施設が建てられ、将来的にはこの施設が123戸に温水を供給することになっている。
また、これに類似した施設がDortmund市のRitterhof地区にあり、ここでは地熱を利用した熱ポンプ付きの省エネハウス90戸の建設が予定されている。
更に、学生の街Aachenでは、地熱を利用した学生サービスセンターの設置が予定されている。
屋上緑化は、ドイツでは1960年代に始まったようだ。
以来、多くの市町村が屋上緑化の価値を認め、様々な形でこれを支援している。
緑化された屋根は断熱性を高めるのに役立つだけではなくいろいろと利点がある。
これまでは、屋上緑化と太陽光発電は別々のものだったが、最近では両方の利点をうまく組み合わせたものが出てきている。
傾きが30度以下の屋根もしくは陸屋根は、こうした利用法にもっとも適している。
最近では、ソーラー集熱器を機能的でありながら見た目に美しく、また、緑化された屋上を周りの景色に溶け込ませるシステムが開発されている。
多くの自治体は、建設計画もしくは新築許可に関して、屋上緑化の規定を設けており環境保護のみならず、より良い都市計画という観点を考慮している。
自然や景観に手を加える際、公的機関は埋め合わせの措置として、屋上緑化を求めることがある。
企業の中には、屋上緑化が企業イメージの向上に役立つと考え、最低限の緑化に留まらず、大胆な取り組みも行う企業もある。
市町村による直接的な助成もなされており、その金額は、通常1m2あたり5〜60ユーロ程度だが、場合によっては、250〜1万ユーロ、あるいは算出できる製造コストの25%から100%というように、最大限のコストが補助されるケースもあるようだ。
間接的な助成とし自治体によっては、屋上緑化により雨水の保水機能がアップすることから下水道料金を50%かそれ以上免除することも行われている。
複数の長期調査の結果、雨水が屋根に保持される割合は、広範囲にごく薄い層を作るだけの簡単な屋上緑化で50%、しっかりした緑化であれば95%にもなることが明らかになっている。

ドイツでは、2002年2月1日の[省エネルギー政令]発効以来、新築住宅は全て低エネルギーハウスとすることが義務付けられている。
エネルギー消費基準を下記の5段階に分類している。
― 低エネルギーハウス
― パッシブハウス
― ゼロ暖房エネルギーハウス
― ゼロエネルギーハウス
― プラスエネルギーハウス
一世帯独立住宅・低エネルギーハウスの場合、エネルギーの消費は年間1m2あたり90kwh。
一方、暖房設備が不要となるパッシブハウスでは、基本的に窓は開けずに、換気装置を常時作動させている。この換気装置によって室内に入る空気は、地中の熱交換器で暖められ、また室内から出て行く空気の熱エネルギーの80%が回収される。
ゼロ暖房エネルギーハウスの場合、気温が平均的な年では、非常に寒い寒い日でも暖房がまったく不要になるという。それは、太陽エネルギーのパッシブな利用と、住宅内にあるわずかな熱(照明や電気器具、また、人の体が発する熱)で十分足りるからだそうだ。
また、ゼロエネルギーハウスでは、太陽光発電システムが燃料電池で自家発電するため、外からの電力供給なしで暮らすことが出来るという。さらに、ソーラーパネルを備えたエネルギー効率が高いプラスエネルギーハウスになると、建築コストは省エネ住宅のなかで最も高くなる反面、採算性は最も良くなる。それは、消費する以上の電力を発電することが出来るので余剰電力を電力会社に売ることが出来るから。
ドイツ南部のフライブルグには、プラスエネルギーハウスが既に47戸完成しており、次期工事の計画も進められている。これを設計したのは、何年も前に、太陽の動きに合わせて回転する円筒形のソーラーハウス(ヘリオトロープ)でセンセーションを巻き起こし、ソーラー建築のパイオニアとして知られるロルフ・ディッシュの建築事務所である。
このプラスエネルギーハウスは、屋上のソーラーモジュールを使って消費電力を超えた発電ができるようになっている。自然建材を使った室内には、陽光が溢れ、高効率断熱・アクティブ換気システムを完備しているため、暖房に必要な電力は、年間わずか10〜15kwh/m2と、従来型住宅のわずか10分の1になるようだ。
ドイツで太陽エネルギーを利用する場合問題となるのは、夏場は過剰なほどに日照があるのに、暖房需要の高い冬場に限って日照が極端に少ないことだ。そこで、大容量の蓄熱システムを建物の地階などに設置して余剰エネルギーを貯える一方で、地熱ゾンデとヒートポンプを使った地中熱利用システムを併用することによって問題の解決を目指している。
しかし、このような省エネの理想モデルとの取り組みはまだごく一部に限られている。日本で、あたかもドイツの住宅のすべてがそうであるかのように言っている人もいるが、低エネルギーハウスの基準が法律で義務付けられているのは新築・改築の場合だけである。ドイツの現実の省エネ事情とはかなりかけ離れていると言わざるをえない。それは、年間の新築・改築戸数がおよそ29万戸なのに対して、既存住宅は3,900万戸、うち2,000万戸が賃貸だからだ。
景観保護と省エネの要請とがぶつかり合った場合、前者が優先する。となると外断熱改修ができないので、改修工事が難しくなり費用がかさむ。高齢化しつつある住人たちはその負担と面倒を嫌う。実際に省エネ改修の現場を見ると、ドイツの既存住宅は構造的にも複雑で厄介な問題を内包していることに気づかされる。
理想の省エネ住宅であっても、新築すればエネルギーを消費する。国全体で考えるなら、温暖化防止にとって重要なのは、4千万戸に近い既存住宅をどうするかであり、省エネ住宅の建設を奨励するよりも、既存の建物の省エネ改修を図るほうがはるかに緊急で重要なテーマだとする意見も多く聞かれる。
※ブログの「ドイツの最先端省エネ事情」
2007年10月15日
松井 修三
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