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社員への述懐

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 次ぎのいろいろな言葉は、これまで私を支え、励まし、育ててくれ、時には反省を求められたものです。
 これは今から10年程前にまとめたものですが、その後も壁に突き当たったときにいつも読み返して勇気を得ています。
 すでに当時、“「いい家」が欲しい”という表現を用いていました。

 最初の言葉は、私が22歳の時、就職するに当たって図書館に出向いて、何か役に立つものを求めて偶然発見したものです。
 私は、この言葉と出会って同じ働くなら「誰にも負けない働き手」になろうと決心しました。
 そして、つらいと思う時、辞めたいと思う時に何遍も読み返したものです。

 人間の人格、識見、力量、不断の努力の基礎となるものこそ、一切の逃げ道を自ら絶って、自分の決心で選んだ勤め先で、真剣に仕事と取り組むことである。
人間の人格、識見、力量、努力の精神も、この仕事と真剣に取り組んで行く過程において養成される。
 逃げ道を持っている人間は、人から使われながらも、辛いこと、嫌なことに遭遇するとふらふらと逃げ腰になる。
 背水の陣の人間は、気迫、性格、能力、風格、努力の精神を養わなければ生きていけないが故に、活路が開けないが故に、自然とそういうものを養っていくのである。
 そして、この人から使われるという苦しくて、つらい事情の中で養った強い人格、識見、力量とたくましい努力の精神こそは、なにものにも代えがたい人間としての宝であり、特にこの財宝を苦労して若い時に身につけた者こそ、やがて会社の内外に活動範囲や勢力を伸ばしていく時、誰にも負けない働き手となるものである。」

 そして、日常をどう対処したらよいのかを次ぎの6点にしぼりました。

1.
礼儀正しく、いつも気持ちよく行動しよう。
2.
いつも初心と感謝を忘れないようにしよう。
3.
すべての始まりは、さわやかな笑顔にあり。
4.
約軽しといえども、これ重んずべし。(これは父が贈ってくれたものです)
5.
プロとしての誇りと、自信と、責任を大切にしよう。
6.
昨日を語るな、今日を生き、明日を信じよう。

 6番目の言葉は、マーガレット・ミッチェル作「風と共に去りぬ」の女主人公であるスカーレット・オハラが、苦しみに打ちのめされ、試練にぶつかるたびに、自らを必死な思いで奮い立たせた生き様から学んだものです。

 次ぎの言葉を知ったお陰で、人に使われることの壁をあまり意識せずに働くことができました。

 芸道では、修・破・離の三段階を通じて、その道の奥義を極めるといわれる。 は、その道の基礎をしっかり修め遵守する時期である。
それを通過すると、こんどは師匠や先輩の教えを突き破って、自分独自の道を切り開く過程に入る。それがである。その過程をこえて、道を離れ、自由自在、融通無碍の境地に入るのがである」

 25歳の時、自分はに10年をかけて、35歳でに入ろう。そして55歳でには入ることを決意したのです。
働きに出て10年もするとベテランになると同時に、理屈が先行し、つい面倒くさい、億劫だというような慢心が起こってくるものです。使う側からすれば、頼みづらい、扱いづらい人になりつつあるということです。
その頃に、私を戒めてくれた言葉があります。「なるほど、そういうものか」と、力んでいた心を安らかにしてくれた言葉でもあります。

 プロとは、いやなことをすすんでするから、好きなことができる人。 アマとは、嫌なことを避けるから、好きなことができない人」

 人生、みな雑事」

 中でも、次ぎの言葉は私を強く戒めてくれたものです。

 行動する者にとって、行動せざる者は最も過酷な批判者である」

 その通りだと思います。一つの会社で共に働くということにおいて、心を一つにして、共に働こうとしないことは、それだけで批判者なのです。
何もしないで、行動する人を批判したり、中傷することほど過酷なことはないというのです。行動しない人に比べたら、どんなことでも前向きに行動する人は、はるかに高く評価されるべきなのです。

 やがて、子供や親や兄弟に関する心配事も増えてきます。壁にぶつかり苦しい時、悩む時が多くなりました。33歳で独立してこの会社を創業しました。
はじめの年に、アレルギー性鼻炎が悪化し、毎晩くしゃみで眠られない夜が続き、昼間は神経性胃腸炎で苦しみました。
創業した翌年、オイルショックで日本経済は大混乱に陥り、会社は倒産の危機に追い込まれました。
次ぎの三つの和歌は、その頃にいつも口ずさんでいたものです。

 憂きことの なおこの上に積もれかし 限りある身の力試さん」

 長い人生には、「憂きこと」つまり、つらいこと嫌なことがこれでもかこれでもかと重なって起こる時期があるものです。
この程度のことでへこたれてなるものか! 神様が自分をどれだけの人間であるのかをお試しになられているのだ。そう思って笑うのです。すると不思議に、「憂きこと」が消えていきました。
そして、常に前向きに仕事に挑戦していくのです。 「大空に そびえて見ゆる高嶺にも 登れば登る道はありけん」です。

 おもしろき ことも無き世をおもしろく 住みなすものは心なりけり」

 これは、私が好きな高杉晋作の辞世の歌です。 恋人に見守られながら高杉は、「おもしろきことも無き世を」まで言って息絶えてしまった。彼の生き様に惚れきっていた恋人は、多分高杉はその後を「住みなすものは 心なりけり」と言い残したかったのだろうと推察して二人の合作になっていると司馬遼太郎が書いています。

 会社を経営してから、これまでに何遍か大変な苦境に落ち込みました。 次ぎの言葉との出会いが、それぞれの時期の苦境から私を救ってくれました。

 自分の立場、見方に固執するから道は開けない。
あがき、もがき、ますます泥沼にはまっていく。
我執を捨てた人間には迫力がある。迫力が状況を変えるのである。
人間同志の対決には、つまるところそれしかない」

 しかしなのです。どんなに努力しても、どんなに迫力を発揮しても道が拓けない場合がありました。そんな時、次ぎの言葉が救ってくれました。

 世の中の盛衰変化は定めなく無常である。
されば閉塞の時代にめぐり合わせた者は、利器をわが身にしまいこんで、
重心を低く下に落とし、時節の到来を待って行動すべきである。
時節は入れかわり立ちかわり変化し、はじめに儲けたものも後で損をし、
始めに窮地に追い込まれたものも、あとでは安全な位置に身を置く。 人間の順境と逆境とには、知恵才覚を超えた大きな時勢の流れ というものがあるのである。
人間を含む大自然の理法の世界は、刻々に流動変化し、
そこでは 沈んだものもまた浮かび上り、浮かび上がったものもまた沈んでいく」

 最近になって、つくづく確かだなーと思わされる言葉があります。 よく「人生は、自分の性格を捜す旅である」と言われますが、次ぎに紹介する芥川龍之介の言葉をかみしめてみてください。

 人間は、性格に合った事件にしかでくわさない。性格が運命を招くのだ。 運命とは、性格なり。性格とは心理なり」

 性格が運命を招くのだ」 私はこの言葉に接した瞬間、ハンマーで頭を殴られたようなショックを受けたものです。最後の「性格とは心理なり」という言葉は、その後私の頭に焼き付いて離れません。
毎日の、心の持ちよう、ありようが性格をつくっていって、やがて人生を決定づけてしまうような出来事に遭遇することになるというのです。

 不幸に近づこうとするのか、幸せに近づこうとするのか、そのためのエネルギーは、毎日の心の持ち方の積み重ねでつくりだされるもののようです。

 人は、思ったとおりの生き方が出来るし、思ったとおりの生き方しかできない、ということもまた真理です。
一日も早く、その真理に気づいて後悔の少ない人生を設計したいものです。

 いい家」が欲しいと願うお客様方のために、精一杯「いい家」を造ってさしあげて感謝されるならば、そのことが自分の幸せへ1歩近づくことになるはずです。同じ時間を過ごすなら、気働きをよくして、楽しそうに、愉快そうにやりましょう。そうした方が、見た目にも美しく映ります。そして、お互いの生活をより豊かなものにしていこうではありませんか!

最後に、マーシャルという人の言葉を紹介します。
 
高き目標をかかげて
建設的、創造的な努力をしない民は滅ぶ
人も、家庭も、企業もみな同じである」

 

松井修三

 

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