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第4回 建てる、売る、逃げる

 

  まあ、石油危機の時は今よりもっとひどかったですからね。会社が潰れそうになった。危機後も「住宅不足だから量の時代」ということでガンガンやっていたが、業績が浮上しない。それで気づいたのは、住宅不足が終わって「質の時代」になっていたということ。
でも、軌道修正できない。そりゃあ、そうですよね。それまで私が「建てる、売る、逃げる」と指示してきたのに、いきなり「質が大事」と言っても、社員は聞きませんよ。それで、自分に「高度成長成り上がり居士」と戒名をつけて死んだことにした。

・・・

 上記の談話は、誰のものかお分かりになりますか?
芥川賞作家である藤原智美さんが〔「家をつくる」ということ〕という著書で褒め称えているミサワホームの社長です。かの有名な三澤千代治さんです。日経ビジネス2003.5.19号に掲載されています。

 藤原さんは、三澤さんに質問したと書いています。
「なぜ人は家を建てるのでしょう?」と。その答えの前に、こんな説明があります。

・・・

 三澤さんは実質的な創業社長として長い間、家づくりに携わってきた人だ。いわゆるサラリーマン社長と違って、その考え方は即座に商品に反映する。そのひと言が何万所帯の住生活を左右するということもあるだろう。それは家族の暮らしそのものに深く影響を及ぼすはずである。そういう立場の人だ。
そして、答えは
 「子育てのためですよ。私はずっとそう思って家をつくってきました」
であると書かれています。

・・・

 さて、二つの談話について私が思ったこと、感じたことです。

 三澤千代治という人は、子育てのための家を「建てる、売る、逃げる」でやってのけてきたというのです。それは明らかに詐欺的な商売です。つまり、儲けたら、欠陥が発覚しないうちに逃げてしまえというのですから。そのような意図で家づくりをして、欠陥を出したら犯罪です。その非を悔い改めるのだったら、戒名つけなどという幼稚な芝居などをしないで、社長を辞めるべきだったのです。まじめに家づくりをしているにもかかわらず、金融機関から厳しい取立てにあって、自殺を余儀なくされる工務店経営者は後を絶ちません。

 でも、経営が苦しいことでは、ミサワホームも同じようだそうです。そこで、UFJ銀行は、ミサワの要請を受けて350億円もの多額な債務を免除しました。
ところがです。その男、三澤千代治さんはぬけぬけと
「うちとしては、本当は債務免除なんか受けたくなかった。めちゃくちゃ信用がなくなるからね。物ごいじゃないんだから、350億円なんかもらいたくない。でもお金が出た(債務免除された)んだからしょうがない。債務免除だから銀行がやろうと思えば勝手にできるんですよ。マスコミが記事を書いたから、そういう流れになってしまった。いずれにしても債務免除分の350億円は、いつか銀行にかえしたいとおもっていますけどね。」と語っています。
方や、1000万円程度の借金が返せなくて自殺に追い込まれ、方や350億円の借金を棒引きにしてもらっても、グダグタと不平不満を言っている経営者がいるのです。
さすがにあきれはてたのか、日経ビジネスは「本誌インタビューに対し三澤社長は、債務免除をマスコミの報道のせいにするなど、当事者意識の欠如を露呈した」と、評しています。

 しかし、そのマスコミがこれまでにどれだけミサワホームのお先棒を担いだことでしょうか!住宅業界のオピニオンリーダーとして、三澤さんを持ち上げ続けてきたことでしょうか!嘆かわしい限りです。
藤原さんの本が発売されたのが、1997年12月6日です。わずか5年ほど前には、藤原智美さんですらミサワの礼賛本を得々として書いていたのです。

 しかし、ミサワホームの家にお住まいの方々、どうぞご安心下さい。社長は、嘆かわしいことを言っていますが、藤原さんの本には、部下である人はこう言っていると書かれていますから。
「当社の商品のほとんどは百年住宅です。ハードウエアや設備を100年間、責任をもってメンテナンスするシステムになっています」と。

2003年5月18日
松井 修三

 

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