
パッシブハウス
投稿日:2016年7月24日



フランクフルトの中心街から、車で30分ほど走ったところで「パッシブハウス」と認定された建物だけが建てられている住宅街を視察した。
年に3日ほどしかないという35度近い暑さは、夜来の雨で和らいだが、午後には日差しがあり、27度・湿度75%の気候だった。
戸建て・2戸長屋から4階建てまでの街区は、どこもシンプルな外観の箱型ばかりで、外壁のアクセントに用いられた色彩のセンスの乏しさが気になった。
どれも一様な外観に変化を付けるには、外装材の選択しかないと言わんばかりのデザインは、すぐに見飽きてしまう。
屋根が見える住宅も建てられていたが、日本の建売住宅の方がずっとおしゃれなものが多い。
ほとんどの住宅の窓が、内倒しで開けられていた。エアコンを使わないので、暑さをしのぐには窓を開けるしかないのだろう。
「パッシブハウス」とは、ダルムシュタットにあるパッシブハウス研究所(PHI)が求める省エネルギー基準を満たしていると同所が認定した建物で、わが国ではこの住宅こそが理想だと主張する建築家や工務店主もいる。
人の発熱量だけで暖かく感じることができるほどの断熱性能に優れているというのだから、皮膚感覚が鋭敏な人や、暑さに弱い人はつらく感じる時期があると思うのだが、住人に言わせると、そんな時期は年に1週間あるかないかなので気にならないという。
家は、その土地、その家族に合うように造られるべきものなのだから、ドイツではそれでいいのだと思った。しかし、「涼温な家」が最高の住み心地を発揮する地域では過剰性能であり、「過ぎたるは及ばざるごとし」を痛感することになると断言できる。
住む人の感受性を二の次にして、省エネ性能や建築物理を最優先する家づくりを私は理想とはしたくない。

- 松井 修三プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
「いい家」をつくる会代表 - 著書新「いい家」が欲しい。
(創英社/三省堂書店)
「涼温な家」
(創英社/三省堂書店)
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