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松井修三の「思ったこと、感じたこと」

「エコハウスという魔法」

これは、2022年4月17日、日本経済新聞NIKKEI The STYLEの一面トップの見出しである。


まずこんな紹介文があった。

「冷暖房のエネルギーをあまり使わなくても夏は涼しく、冬は暖かい。そんな魔法のような家がある。光熱費の節約になるばかりか、家の中が快適になることで、住み手の健康や心にもプラス面があるという。

こうした仕組みを街づくりや地域の活性化に役立てようとの試みも始まっている。地球温暖化防止の観点からも大いに注目されるエコハウスを各地に訪ねた。」

ページをめくると、各地に建てられた6例ほどが記者の感動を込めた筆致で紹介されていた。


読み終わって、20数年前を思い出した。

朝日新聞が、スウェーデンのエコハウスを「無暖房住宅」として紹介したことがあった。記事を読んで間もなくの2001年5月、設計士3人を伴ってスウェーデンのイエテボリを訪ねてみた。あいにく、記者が取材した建築家ハンス・エイクさんは急用が出来て、代理の方が応対してくれた。


「最近、日本からの見学者が急増しているのだが、私は日本の建築の方が学ぶべきところが多いと思っている。ブルーノ・タウト(ドイツの建築家。桂離宮を見て涙が出るほど感動したという)のように、いつかゆっくりと日本建築を学びに行きたい。

ところで、あなたも無暖房住宅に関心があってやって来たのか?」と聞かれた。

うなずくと両手を広げ、「それは設備の問題であって、日本でもそのうち当たり前に使うようになるはず」と、「わざわざ日本から見学に来るほどのものではない」と言わんばかりの態度だった。

私の反応を見て、すぐに解説を加えた。

「決して無暖房なのではありません。熱交換換気にヒーターを組み込んでいる。つまり、換気に一工夫しているということです」と。


「えっ、無暖房ではない?!

朝日新聞の記者にあれだけ確認したのに」、私の疑問は的中していたのだ。


彼は現場に私たちを案内し、これからの家は、エコロジーに適うものにすることがとても大事であり、そのためには断熱性・気密性を高めるとともに、太陽熱の利用、開口部はもとより換気の熱損失をいかにして減らすかを工夫し、省エネルギー化を図ることだと熱心に説明してくれた。


後で、通訳の人とこんな会話をした。

「日本からの見学者のほとんどが、断熱材の厚さが45センチもあると聞いて驚嘆するのですが、皆さんのように関心を示さない人は初めてです」

「緯度的に言えばオホーツク海の北に位置する国での家づくりですからね。かといって、断熱材をそれほどまでに厚くしたところで、暖房なしでは暖かくはならないはずですよ。エコロジーに拘り過ぎると、つい無暖房などと言いたくなるのでしょうかね」

建築に明るいベテランの通訳さんは、私の訪問のきっかけが朝日新聞の記事にあると知って話してくれた。

「あの時の通訳も私がさせていただきました。ハンス・エイク先生は、決して無暖房とは言ってませんよ。暖房に使うエネルギーをできるだけ少なくするための工夫が大事だと。松井さんが首をひねりながら熱心にご覧になっていたあの換気装置の役割を、記者さんはよく理解できなかったのかもしれませんね」

「科学的にではなく、情緒的に理解したのでしょう。その方が記事としては面白くなりますから。私は、本当に暖房をしていないのかと何度も念を押したのですよ」

これらの会話は、同行した社員のレポートに記録されていて、社員たちとはその夜食事をしながら、感想を話し合った。

男性の設計士は、朝日の記事がなければ連れてきてはもらえなかったと笑った。

女性の設計士が、「温室効果ガス削減と言うと暖房費の削減=断熱強化=エコハウスが方程式になって、家づくりがつまらなくなりました。ブルーノ・タウトさんが嘆いているのと違います?」

もう一人の女性の設計士が言った。

「エコロジーのためにと、毎日、節電や暮らし方の工夫を意識させられるようではストレスになります。今は具体的には言えませんが、もう一段、上の家づくりを目指すべきだと思います」

「つまり、日本の気候特性に適う、日本人の皮膚感覚に合った家ということだね」

男性の設計士が締めくくった。

「エゴと言われるかもしれませんが、エコハウスよりも住み心地で感謝される家を造りたいです」と。


それから11年後に「涼温な家」は開発された。

暖かさ・涼しさは日経の紹介文どおりの家であるが、「無暖房」ではない。「無暖房」となると、まさに魔法の世界になってしまう。

字引には「魔法とは、普通の人間には使うことのできない能力や不思議な現象を指す」とある。

東京都練馬区江古田に自宅を建て、「エコだハウス」とはしゃいでいる都知事の小池百合子さんが飛びつきたくなる言葉だと思う。

話は大分それたが、日経が「魔法」と付けるからには、取材したエコハウスはこれまでの常識を覆す、驚くばかりの暖かさ・涼しさを発揮する家であるということは確かなのだろう。


一方、「涼温な家」は、住宅の一番大切な価値である住み心地を、科学的・合理的に追求していくと得られる答えなのである。

日経の記者が各地を訪ね歩いて、魔法を生み出すものと感動した特別な工夫や仕掛けはどれも必要ない。


近々、新「『いい家』が欲しい。」の改訂版Ⅳが発行となる。

最初のページにこう書かれている。


この本には、住宅展示場では知ることができないものが二つある。

一つは、住宅の一番大切な価値は何かということ。

二つは、「換気が主、冷暖は従」という家づくり、すなわち「涼温な家」である。

知って建てるか、知らないで建ててしまうのか、一家の幸せはまるで違ったものになる。


「エコハウス」が続いたが、年寄りの話は繰り返しと昔話が多いと思わないでいただきたい。83歳を過ぎて見える真実がいろいろある。中には、読んでよかったと思っていただける話もあるに違いない。

松井修三プロフィール
  • 松井 修三 プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
  • 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)