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松井修三 エッセイ集「思ったこと、感じたこと」

続「新しい家のカタチを教えてください!」

「見る、聞く」から「感じる」家づくりへ

「新しい家のカタチを教えてください!」は、2020年1月6日、まだ新型コロナウイルスを知らないときに書いた。

その後、日を追って感染拡大が騒がれるようになった。

3月半ばを過ぎると住宅業界も対策を迫られ、4月に入って「緊急事態宣言」を受け、住宅展示場はもとより営業店も自粛し、現場も工事停止に追い込まれるところが目立ち始めた。

以来、私の頭の中には毎日のように大和ハウスの広告が思い出され、芳井社長の先見力に感心させられるとともに、「私の答えは簡単だ」と言い切った自分の答えが正しいものなのか、しきりに反芻していた。


2019年9月、私は2020年を見据えて造り手たちは住宅に求める本当の価値が分からなくなっていることについて警鐘を鳴らすべく「家に何を求めるのか」を出版した。そこにコロナウイルス禍が降りかかってきた。

我ながら、そのタイミングに驚いた。厄災に見舞われなくても、わが国の家づくりは「新しい家のカタチ」を見出さざるを得なかったからである。

だから、1月6日の時点で大和ハウスの広告について、「2020年代の住宅市場の変化を予感させる広告である」と書いたのだった。

国は、「新しい日常」・「新しい生活様式」を描き、国民に対応を求めている。コロナ禍は、営業にも、家づくりそのものにも新たな価値観(新ノーマル)の構築を迫っている。

それが「新しい家のカタチ」であるとすれば、芳井社長でなくても誰もが知りたいはずだ。


営業に関しては、大手ハウスメーカーはネット広告を増やし、「家にいながら家づくり」、つまり、リモート営業を本格化している。「おうちで家づくり」、「オンライン設計相談」、「Webカタログ」などを見ると、オンライン営業が「新常態」になったかのような印象を受ける。中には、「自宅で体感、バーチャルモデルハウス」と訴えるメーカーもある。


しかしながら、6月29日現在、「新しい家のカタチ」は見えてきていない。

「家に何を求めるのか」が定かではないのだ。

「震度7に60回耐える家」・「ゼロ・エネルギー・ハウス」・「スマートシティ」・「テレワークがしやすい家」・「IoT次世代住宅」などは、すでに提案済みの「見せて・聞かせる」ものであり、オンライン営業に乗る家づくりである。

それらは住宅のいちばん大切な価値、すなわち住み心地を二の次にしている。

「家に何を求めるのか」のキャッチコピーを「新築 思い立ったらまず読む本」としたのは、みなさんにそこに気付いて欲しいからである。


家づくりは、見て聞いて比較するだけではなく、感じて納得すことが大事だ。「感じて建てる家」を知ることは、あなたに計り知れない利益をもたらす。なぜなら、住み心地の質には「とても良い」「まあまあ」「悪い」があって、健康維持・増進に役立ち、住む楽しみが得られるのは「とても良い」場合だけなのだから。

そのための絶対条件は、空気が気持ちいいことだ。

住み心地は、理屈や理論や数値ではなく、言い換えれば「見て、聞いて」ではなく、空気を吸って、つまり「感じて」納得するものである。

住み心地にとって、性能は必要条件ではあるが十分条件ではない。いくら断熱性能や燃費に優れていても、空気が気持ちよく感じられなければストレス住宅だ。

住む人が感動する肌に合う涼しさ・暖かさは、「換気が主、冷暖は従」とする「涼温な家」だから得られるものなのだ。


コロナ禍で外出自粛を求められていた時に、「涼温な家」に住む主婦にお尋ねしたところ、皆さんが異口同音に「家にいるのが一番楽しいです」答えられた。

「部屋だけでなく、家中どこにいても空気が気持ちいい」つまり「空気」に安心し、暮らしを楽しんでいたのである。

「家にいる時です。一番幸せに感じるのは!」と言ってもらえる家づくり、それこそが「新しい家のカタチ」であると私は確信している。


テレビで、「エアコン利用時の窓開け換気の必要性」についての解説を聞くたびに、「換気が主、冷暖は従」という「涼温な家」の先見性、ありがたさを痛感するという意見がお客様から数多く寄せられている。

松井修三プロフィール
  • 松井 修三 プロフィール
  • 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
  • 1961年中央大学法律学科卒。
  • 1972年マツミハウジング株式会社創業。
  • 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
  • 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
  • 現在マツミハウジング(株)相談役
  • 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)